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「捕獲器を買うのはお金がかかるから、段ボールで手作りできないか」。地域猫やTNR活動をしていると、実はときどき耳にする話です。結論から言うと、段ボールなど身近な素材で自作した捕獲器は、猫を傷つけたり取り逃がしたりするリスクが市販の金属製捕獲器より高く、獣医師の立場としてはおすすめできません。
大分県で不妊去勢手術を専門とする獣医師で、長崎でも保護猫・地域猫の活動に関わっています。この記事では、段ボールの手作り捕獲器がなぜ安全面でおすすめできないのか、その理由と、購入以外に検討できる選択肢を、現場の獣医の立場から解説します(内容は2026年8月時点の一般的な知見です)。
段ボールの手作り捕獲器にはどんなリスクがあるか

捕獲器は、扉が閉まった瞬間に猫が驚いて激しく暴れることが少なくありません。市販の金属製ワイヤー捕獲器は、こうした急な力がかかることを想定して設計・製造されていますが、段ボールのような紙製の箱は本来そのための強度を持っていないんですよ。
パニックになった猫が体当たりを繰り返すうちに、側面が破れたり継ぎ目が外れたりして、そのまま逃げてしまうことがあります。逃げられるだけならまだよいのですが、破れた隙間から猫が前脚や顔を強引に押し出そうとして、鋭い破断面で皮膚を切ってしまったり、逆にその隙間に人が手を近づけて咬まれたり引っかかれたりする事故につながる可能性もあるんです。
こうしたリスクは、複数の一般的な情報サイトで共通して指摘されている内容です。具体的に何件の事故が起きているかという統計までは確認できていませんが、猫は本能的に強い力で脱出しようとする動物で、「たまたま今回は大丈夫だった」がいつも続くとは限らない・・・というのが現場の実感です。
自作を検討する前に、無償貸出という選択肢を確認する

段ボールでの自作を考える理由の多くは、「捕獲器を買うお金をかけたくない」というものだと思います。ですが、購入以外にも選択肢はあるんですよ。自治体やTNRを支援する団体の中には、捕獲のための捕獲器を無償で貸し出す制度を設けているところがあります。
ただし、こうした貸出制度はすべての地域に一律であるわけではなく、対象になる活動の条件や貸出期間、必要な手続きは自治体・団体ごとに異なります。「うちの地域にもあるはず」と思い込まず、まずはお住まいの自治体のホームページや窓口で確認するところから始めてみてくださいね。
大分市の実例:登録団体への捕獲器貸し出しと手術費助成

私が活動している大分でも、こうした支援制度が実際に運用されているんですよ。大分市の地域猫活動の支援制度では、大分市に登録した地域猫活動グループに対して、捕獲のための捕獲器の無償貸し出しと、不妊去勢手術費用の一部助成(オス上限1万円・メス上限2万円)を行っています(2026年8月時点)。
このように、公的な制度を使えば、自作にまつわるリスクを負わなくても捕獲器を用意できる場合があります。同様の貸出制度を設けている自治体や団体もあるので、まずはお住まいの地域で確認してみる価値は十分にありますよ。実際に捕獲器を使うときの手順や注意点は、別記事の捕獲器の正しい使い方で詳しく解説しています。
段ボールではなく、市販の捕獲器を検討する

貸出制度が利用できない場合や、自分の活動用に手元に置いておきたい場合は、市販の金属製捕獲器の購入も選択肢になります。錆止め加工が施されたワイヤーメッシュ製の捕獲器は、繰り返し使える耐久性があり、段ボールのような一回性のリスクを避けられますね。
なお、対象の猫が人によく慣れていて、キャリーケースなどでの保護が現実的な場合は、そもそも捕獲器そのものを使わない方法もあります。猫の性格や慣れ具合によっては、捕獲器を使わない保護の方法も検討してみてくださいね。
捕獲器を使うときに知っておきたい注意点

捕獲器を自作するにせよ購入するにせよ、共通して守っておきたい注意点がありますよ。少し説教くさくなりますが(汗)。
まず、捕獲する前に、その猫が本当に飼い主のいない猫かどうかを必ず確認してください。首輪をしていないか、外に出ている飼い猫や迷い猫ではないかを見極めることが大前提です。
また、他人が世話をしている猫を無断で捕獲すると、器物損壊や窃盗として問題になる場合があります。地域でよく見かける猫であっても、誰かが世話をしている可能性を考えて、周囲に確認してから行動することが大切です。
私有地に捕獲器を置く場合は、必ず土地の所有者の了承を得てください。あわせて近隣の住民にも一声かけておくと、「知らない箱が置いてある」といった不安やトラブルを防ぎやすくなりますよ。
そして、無事に捕獲できたあとは、長時間かけっぱなしにせず、なるべく早く動物病院へ連れて行きましょう。特に真夏・真冬は、狭い捕獲器の中にいること自体が猫の体力を消耗させるんですよ。
まとめ

市販の捕獲器の例
本文の結論の通り、安全面を考えるなら市販の捕獲器を使うのが確実です。実際にTNRの現場で使われているタイプの例を挙げておきます。使うときは、炎天下・寒空の下に放置しない、かかったらすぐ布で覆う、といった本文の注意点とセットでお願いします。
踏板式の捕獲器(サイズが選べるタイプ)
踏板を踏むと扉が閉まる、いちばん標準的な方式です。サイズが選べるので、対象の猫の大きさに合わせられます。手作りで再現しづらい「確実に閉まって、猫を傷つけない」部分が最初から作り込まれています。
栄ヒルズ No303(日本製の定番)
保護活動の現場で定番になっている日本製の捕獲器です。作りが頑丈で扉の動きが確実なので、警戒心の強い猫の一発勝負でも信頼できます。
この記事のまとめ
- ✓ 段ボールなど自作の捕獲器は強度が低く、パニックになった猫が壊して逃げたり、隙間から前脚・顔を出して咬傷・引っかき事故につながるリスクがある
- ✓ 自治体やTNR支援団体には捕獲器の無償貸出制度があるが、対象・条件は自治体・団体ごとに異なる
- ✓ 大分市は登録した地域猫活動グループへ、捕獲器の無償貸し出しと不妊去勢手術費用の一部助成(オス上限1万円・メス上限2万円)を行っている(2026年8月時点)
- ✓ 貸出制度が使えない場合は市販の金属製捕獲器を検討する。猫が人に慣れていれば捕獲器を使わない保護方法もある
- ✓ 捕獲前は飼い猫でないかの確認、無断捕獲のトラブル、私有地・近隣への配慮、捕獲後は速やかに動物病院へ、という基本を守る
段ボールでの自作は、コストはかからなくても猫にとっても人にとってもリスクを伴います。まずはお住まいの自治体や活動先の地域に、捕獲器の無償貸出制度がないか確認するところから始めてみてください!
※記事内の情報は2026年8月時点のものです。捕獲器の貸出制度・助成内容は自治体や団体ごとに異なり、変更される場合もあります。猫の個体差もあるため、最新の情報や個別の状況については、お住まいの自治体や動物病院の公式情報でご確認ください。