「この子、オスかな、メスかな」。捕獲器を仕掛ける前に、ふと気になったことはありませんか。ええ、わかります。TNR(ティーエヌアール)に取り組んでいると、みなさんだいたいそこで一度立ち止まりますよね。
私は大分県で不妊去勢手術を専門とする獣医師で、長崎でも保護猫・地域猫の活動に関わっています。TNR活動そのものの流れはTNR活動の詳しい流れで解説していますので、この記事では捕獲前に絞って、外から観察できる性別・年齢のポイントをまとめます。
先に断っておくと、外見だけの判断は「おおよその目安」です(と言い切れるほど完璧に見抜けたら、こちらも苦労はしません)。確定させるのは、手術当日の獣医の触診だと思っておいてください。それでも、事前に見当をつけておくと、捕獲の準備や病院への相談がぐっとスムーズになります。
性別を外見で見分けるポイント

体格・顔つきの違い
オス猫は骨格がしっかりしていて、成猫でだいたい4〜6kgほどになることが多いです。顔も横に広がりやすく、ひげの周りや鼻まわりがどっしりして見える傾向があります。
一方のメス猫は、成猫でも3〜4kgほどでほっそりしていることが多く、頬の肉づきが薄いぶん、輪郭が丸か逆三角形に近い印象になります。もっとも、これはあくまで傾向にすぎません。がっしりしたメスも、華奢なオスもいますので、体格だけで決めつけるのは禁物です。猫は自分の体格を気にする様子など、まるで見せてくれませんしね。
生殖器で見る確実な方法(成猫)
いちばん確実なのは、しっぽを持ち上げて確認する方法です。成猫のオスは、肛門のすぐ下あたりに丸いふくらみが2つ並びます。俗に「Ω(オメガ)」の形と呼ばれるものです。メスは睾丸がなく、コーヒー豆のような形の外陰部だけがあり、見た目はすっきりしています。
ただし、捕獲直後の猫が大人しく見せてくれるとは限りません。確認は、病院で落ち着いた状態のときに行うのが基本です。
子猫の性別判定(生後4週以降)
生後4週齢を過ぎたあたりからは、肛門と尿道口(陰部の開口部)の距離でも判断できます。オスはこの距離が長く、メスは短いのが特徴です。とはいえ、子猫は本当に小さいので、経験がないと見分けはなかなか難しいところです。無理をせず、病院で確認してもらうのがいちばん確実です。
年齢はどこで判断する?

歯の状態
歯は年齢の見当をつけるのにわかりやすい部位です。1歳前後は永久歯が生えそろい、真っ白でつやつやしています。まるで新品の陶器のような白さなんですよ。2〜3歳になると少し黄ばみが出始め、3歳を超えると歯石も目立つようになってきます。7歳を過ぎたあたりからは、歯の先端が丸くすり減ってくることが多いです。
毛並みとひげ
毛のツヤやハリがいちばんいいのは、生後2年ほどまでの時期です。シニアに近づくと、ひげの本数が減ったり、毛のハリが落ち着いてきたりします。見た目年齢だけで正確に言い当てられたら、それはもう特技として披露したいくらいなんですが、実際は個体差が大きく、あくまで目安どまりです。
目の色・濁り
子猫は生後1〜2ヶ月ほどまで、灰色がかった青い目をしています。「キトンブルー」と呼ばれる時期ですね。その後、メラニン色素が沈着して、緑や黄色、青など成猫の目の色に落ち着いていきます。シニア期になると、白内障で黒目の部分が白く濁ってくることもあります。
| 年齢の目安 | 歯 | 毛並み・ひげ | 目 |
|---|---|---|---|
| 1歳前後 | 真っ白でつやがある | ハリがあり豊か | 成猫の色に定着 |
| 2〜3歳 | 軽い黄ばみが出始める | つやが安定 | 変化はほぼなし |
| 3歳以上 | 黄ばみ・歯石が目立つ | 個体差が出てくる | 変化はほぼなし |
| 7歳以上 | 先端がすり減り丸みが出る | ひげが減り、ハリが低下 | 白内障で濁ることも |
捕獲前の観察で気をつけたいこと

捕獲前の外見観察でわかるのは、あくまで「おおよその目安」までです。大分や長崎のような地域でTNRに取り組む人たちの間でも、この感覚はだいたい共通しています。
妊娠しているかどうかを、外から確実に見分ける方法は残念ながらありません。お腹が大きくなっていても、それが妊娠なのか、ただ食べ過ぎなのかは、外見だけでは判断がつかないことも多いんですよ。
猫の発情や妊娠は、こちらの予定などお構いなしにやってきます。まあ、しょうがないんですけどね。だからこそ、性別や年齢の見当がついた時点で、早めに病院へ相談し、手術日を押さえておくのが安全です。
手術を終えてリターンした猫は、その後は地域猫として見守られていきます。地域猫という考え方については、別の記事でも詳しく触れていますので、あわせて読んでみてください。
結局のところ、外見の観察はあくまで捕獲前の下ごしらえです。最終的な確認は、手術当日に獣医が行います。無理に自己判断で結論を出さず、わかる範囲までで十分です。
まとめ

この記事のまとめ
- ✓ 性別は体格・顔つきに傾向はあるが、確実なのはしっぽを持ち上げての生殖器の確認
- ✓ 子猫は生後4週齢以降、肛門と尿道口の距離が手がかりになる
- ✓ 年齢は歯の黄ばみ、毛並みのハリ、目の色や濁りが目安になる
- ✓ 妊娠の有無は外見だけでは判断が難しく、最終確認は手術当日の獣医の触診に委ねる
よくある質問
Q. 見た目だけで性別を確実に判定できますか?
体格や顔つきはあくまで傾向で、確実なのはしっぽを持ち上げて生殖器を確認する方法です。子猫の場合は肛門と尿道口の距離も手がかりになりますが、最終的な確認は手術当日に獣医が行います。
Q. 子猫の年齢はどうやって見分けますか?
目安になるのは歯の白さ、毛並みのハリ、目の色の変化です。生後1〜2ヶ月ごろまでは目が青みがかった「キトンブルー」であることが多く、その後、成猫の目の色に定着していきます。
Q. 妊娠しているかどうかは外見でわかりますか?
外見だけで確実に判断する方法は確立されていません。お腹の大きさだけでは判断がつかないことも多いため、疑わしい場合は早めに病院へ相談し、手術当日に確認してもらうのが安全です。
性別や年齢の見当がついたら、それで十分です。あとは捕獲の準備を進めながら、病院への相談を早めに済ませておきましょう。
・・・当の猫は、こちらの見立てなど気にする様子もなく、今日もどこかでのんびりしています。
※記事内の情報は2026年9月時点の一般的な目安です。個体差があり、確実な性別・年齢の判定は動物病院での確認が必要です。