「耳の先が欠けた猫を見かけたけど、あの形って決まりがあるの?」。ええ、気になりますよね。
結論から言うと、日本で一般的なのはV字のカットです。海外では先端をまっすぐ横に切る直線カットの地域も多く、国内でも直線を採用する団体があります。そして、全国で決まった統一規格はなく、動物病院や地域の活動団体ごとに運用が違います。
私は大分県で不妊去勢手術を専門とする獣医師で、長崎でも保護猫・地域猫の活動に関わっています。この記事では、耳カットの形の種類とそれぞれの特徴、そして見かけたときの受け止め方をまとめます。耳カットの形は猫の世界の名札のようなものですが、名前は書いていないので、読み解くのは人間側の仕事です。
そもそも耳カットは何のためにあるのか

耳カットは、不妊去勢手術が済んだ目印です。TNRの基本(捕獲して手術をし、元の場所に戻す活動)で手術を受けた猫は、外から見ただけでは手術済みかどうかがわかりません。目印がないと、同じ猫が再び捕獲されて、もう一度麻酔を受けることになりかねないんですよ。
公益財団法人どうぶつ基金の公式ページによると、耳先の目印がなかったために、2021年度に1,266頭が2度捕獲されたそうです。同ページでは、カットは獣医師が不妊手術の麻酔中に行い、止血処置をすること、手術後の出血はほとんどなく痛みもないことも説明されています。
耳カットをされた猫は「さくらねこ」とも呼ばれます。名前の由来や意味の全体像は、耳カットとさくらねこの解説で詳しく書いています。この記事では、その「形」に焦点を絞ります。
日本で一般的なV字カットの特徴

日本で一般的なのは、耳の先端をV字に切るカットです。切り取ったあとの耳先がV字の切れ込みになるので、耳を見れば形の特徴がつかめます。
「さくらねこ」の呼び名は、2012年10月、沖縄県石垣島で行われた大規模な一斉TNRの際に生まれました。耳の形が桜の花びらに見えることに由来する、とどうぶつ基金の公式ページに記載があります。猫に花を愛でる余裕があるかは別として、風流な命名です。
なお、オスは右耳・メスは左耳という運用が多いとされますが、全国で統一されたルールではなく、地域や団体で異なります。左右の意味は形の話とは別の軸なので、ここでは深掘りしません。
直線カットの特徴と使われ方

海外では、耳の先端をまっすぐ横に切る直線カットを採用する地域も多いとされています。国内でも、直線(先端カット)を採用する団体があります。切り口が一直線になるので、耳の先が平らに見えるのが特徴です。
V字と直線は、どちらが優れているという話ではなく、運用の違いです。活動するグループごとに形をそろえておくと、目印として読み取りやすくなるという事情があるようです。「統一してくれればいいのに」と思うのが人情ですが、猫の耳の形を決める会議を開いたところで、当の猫は一匹も出席してくれません。
丸カットなど、その他の形と小さすぎるカットの落とし穴

動物病院によっては、耳先を小さくV字に切る、丸く切るなど、方法が異なることがあります。厳密な全国共通ルールはなく、病院や地域の活動団体ごとに運用が違うのが実情です。
気をつけたいのは、カットが小さすぎる場合です。小さすぎるカットはケンカ傷と見分けがつかないため、小さすぎないカットが望ましいとされています。目印は、見た人に気づいてもらえてはじめて意味を持ちます(目印なのに目立たない、というのがいちばん困るパターンです(汗))。
形の違いを一覧で比べると

ここまでの内容を、短く表にまとめます。いずれも公的な統一規格ではなく、あくまで一般的な傾向です。
| 形 | 特徴 | 使われ方・注意点 |
|---|---|---|
| V字 | 耳先がV字の切れ込みになる | 日本で一般的 |
| 直線 | 先端をまっすぐ横に切る | 海外の地域で多い。国内でも採用する団体がある |
| 丸・小さなV字など | 病院によって切り方が異なる | 小さすぎるとケンカ傷と見分けにくい |
耳カットの猫を見かけたときの受け止め方

V字でも直線でも、耳先に切れ込みのある猫は「手術済みの目印がついている猫」の可能性が高い、と受け止めて大丈夫です。形は違っても、目的は同じです。地域で見守られている猫については地域猫とはもあわせてご覧ください。
「じゃあ、耳を見れば全部わかるんでしょう?」。そう言いたいところですが・・・、形だけで手術済みかどうかを判断するのは避けたほうが安全です。小さなカットは傷と区別がつきにくいこともあるからです。
迷ったときは、地域猫の活動団体や近くの動物病院に相談してください。大分県でも長崎でも、地域猫の現場では耳先の目印は大切な手がかりのひとつです。見かけた猫の耳の形・毛色・特徴を記録しておくと、相談もしやすくなりますよ!記録の方法は個体記録のつけ方で紹介しています。
まとめ

耳カットの形は、V字が一般的で、直線を使う地域や団体もあります。形が違っても、手術済みの目印という目的は同じです。
この記事のまとめ
- ✓ 耳カットは不妊去勢手術が済んだ目印。日本で一般的なのはV字カット
- ✓ 海外では直線カットの地域も多く、国内でも直線を採用する団体がある
- ✓ 全国共通の厳密なルールはなく、病院や地域の活動団体ごとに運用が違う
- ✓ 小さすぎるカットはケンカ傷と見分けがつきにくいため、小さすぎないカットが望ましいとされる
- ✓ 形だけで手術済みかを判断せず、迷うときは地域の活動団体や動物病院に相談する
よくある質問
Q. 耳カットの形は全国で決まっていますか?
公的な統一規格はありません。日本ではV字が一般的ですが、直線を採用する団体もあり、動物病院や地域の活動団体ごとに運用が違います。
Q. V字と直線では、どちらが正しい形ですか?
どちらが正しいと決められるものではなく、運用の違いです。活動している団体や、手術を担当する動物病院の方法に合わせて行われています。
Q. 耳先が欠けている猫は、手術済みと考えてよいですか?
耳カットの目印である可能性は高いですが、形だけでは判断できません。小さなカットは傷と見分けがつきにくいこともあるため、迷うときは地域の活動団体や動物病院に相談してください。
Q. 耳カットは痛くないのですか?
どうぶつ基金の公式ページによると、カットは獣医師が不妊手術の麻酔中に行い、止血処置をします。手術後の出血はほとんどなく、痛みはないと記載されています。
Q. 耳の左右に意味はありますか?
オスは右耳・メスは左耳という運用が多いとされますが、全国統一ではなく、地域や団体によって異なります。お住まいの地域の活動団体に確認するのが確実です。
耳カットは、猫を二重の手術から守るための小さな目印です。TNR全体の流れはTNRの3ステップにまとめていますので、あわせて読んでみてください。
・・・猫の耳は、じっくり見たいときに限って、こちらを向いてくれないんですけどね。
※記事内の情報は2026年9月時点のものです。耳カットの形や運用は地域や動物病院によって異なります。どうぶつ基金の活動内容は公式サイトでご確認ください。