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「地震や大雨のとき、猫を置いて逃げるべきか」。この問いへの答えは、国の考え方としてははっきりしています。環境省は、飼い主がペットと一緒に避難する「同行避難」を原則としています。ペットが気がかりで逃げ遅れることが、飼い主自身の命を危険にさらすからなんですよ。
ただ、ここで多くの方が誤解するんです。同行避難は「避難所で猫と一緒に暮らせる」という意味ではありません。この違いを知らないまま当日を迎えると、避難所の入り口で困ってしまいます。
大分県で不妊去勢手術を専門とする獣医師で、長崎でも保護猫・地域猫の活動に関わっています。この記事では、環境省のガイドラインをもとに同行避難の基本を整理し、猫のために平常時から備えておくものを具体的にまとめます(内容は2026年8月時点の情報です)。
「同行避難」と「同伴避難」は別のことば

環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」でいう同行避難とは、ペットと一緒に避難場所まで避難するという「行動」を指します。避難所の中でペットと一緒に生活することではないんですよ。
一方の同伴避難は、同じ避難所で人とペットが過ごす「状態」を指す言い方です。ただし同伴避難を受け入れている避難所でも、人の居住スペースと動物の飼育スペースは分けられているのが一般的で、必ずしも同じ部屋で過ごせるわけではありません。動物アレルギーのある方や、動物が苦手な方も同じ場所に避難してくるためです。
| 用語 | 意味 | 避難所での扱い |
|---|---|---|
| 同行避難 | 猫と一緒に避難場所まで逃げる「行動」 | 飼育場所は人の居住スペースと別が原則 |
| 同伴避難 | 同じ避難所で人と猫が過ごす「状態」 | 受け入れの有無・同室可否は避難所ごと |
自治体の案内でも、「同行避難とは避難所等へペットと一緒に避難することをいい、避難所の同じスペースでペットと生活できること(同伴避難)を指すものではない」と明記している例があります(千葉市の案内・2026年8月時点)。
避難所の受け入れルールは自治体ごとに違う

ここが最も大切な注意点なんですが・・・、ペットの受け入れ方は全国一律に決まっているわけではなく、市町村ごと、さらには避難所ごとに運用が異なります。
私が活動している大分でも、対応は市によって違うんですよ。別府市は野口ふれあい交流センター体育館に「ペット同伴専用避難所」を設けており、ケージに入る大きさであること、飼い主が適切に管理できる動物と頭数であること、飼育に必要な用具を準備していることなどを条件にしています。中津市はダイハツ九州アリーナの2階にペット同伴者専用の避難スペースを確保する一方、それ以外の避難所では避難者と離れた屋外等の飼育スペース、または飼い主の車での車中飼育が原則と案内しています(いずれも2026年8月時点)。
同じ県内でもこれだけ違うんですよね。「近所の避難所は猫を受け入れてくれるのか」「猫をどこに置くことになるのか」は、必ずお住まいの自治体の公式案内で事前に確認してください。市町村のホームページで「ペット 避難」「同行避難」といった言葉で探すと、地域防災計画や避難所一覧のページにたどり着けます。確認しておきたいのは次の3点です。
- 猫を連れて行ける避難所はどこか(すべての避難所とは限りません)
- 猫をどこで飼育することになるか(屋内の専用室・屋外のスペース・車中など)
- 持参が必須のものは何か(ケージ、フード、ワクチン接種の記録など)
確認した内容は、家族で共有してメモに残しておくと当日迷いませんよ。担当窓口は、お住まいの市町村の公式案内ページでご確認ください。
平常時にしておきたい3つの備え

キャリーやケージに慣らしておく
猫は環境の変化に弱く、当日いきなりキャリーに入れようとしても入ってくれません。普段からキャリーを部屋に出しっぱなしにして、寝床やおやつを食べる場所として使わせておくと、避難のときの負担がぐっと減るんですよ。避難所ではケージでの飼育が前提になることが多いため、ケージの中で数時間落ち着いていられる状態を目標にしてください。
迷子になったときのために身元を残す
災害時に猫とはぐれてしまう例は少なくありません。首輪と迷子札に加えて有効なのがマイクロチップです。動物愛護管理法の改正により、令和4年(2022年)6月1日以降にペットショップやブリーダーなどの販売業者から販売される犬猫には、マイクロチップの装着と情報登録が義務づけられました。それ以前から飼っている猫や、個人から譲り受けた猫については義務ではなく努力義務なんです(2026年8月時点)。
装着した場合は、環境省のデータベース「犬と猫のマイクロチップ情報登録」に飼い主の情報を登録します。番号だけ入っていて登録情報が古いままだと、保護されても連絡が届きません。引っ越しや飼い主の変更があったときは、変更登録を忘れないでくださいね。完全室内飼いの猫でも、避難の混乱でドアから出てしまうことがあります。屋外に出る猫の居場所を把握する道具としては、猫用GPS首輪の選び方もあわせて参考にしてください。
健康管理を整えておく
避難所では多くの動物が同じ場所に集まります。ワクチンの接種と、ノミ・ダニなどの寄生虫対策を平常時から済ませておくことが、猫自身と周囲の動物を守ることにつながるんですよ。不妊去勢手術も、発情に伴う鳴き声や繁殖のトラブルを避けるという意味で、防災上の備えの一つです(不妊去勢のメリットと注意点)。
薬を飲んでいる猫や持病のある猫は、薬の名前と量をメモにして持ち出し袋に入れておくと、避難先で獣医師に診てもらうときに役立ちます。避難中に体調の異変が見られたときは、自己判断せず動物病院を受診してください。
猫と避難するために備えておくもの

自治体の案内では、ペット用のフードと水は少なくとも5日分、自治体によっては7日分以上の備蓄がすすめられています(千葉市は5日分以上、中津市は7日分以上と案内・2026年8月時点)。災害直後は流通が止まり、支援物資は人用が優先されるためです。
| 優先度 | 備えるもの | ひとこと |
|---|---|---|
| 最優先 | キャリーバッグ・ケージ | 扉が確実に閉まるもの |
| 最優先 | フードと水(5〜7日分) | 食べ慣れたものを多めに |
| 最優先 | 常備薬・療法食 | 薬名と量のメモも一緒に |
| 最優先 | 首輪と迷子札 | チップ番号の控えも添える |
| 次に | 猫砂・ペットシーツ・ポリ袋 | 使い慣れた砂だと排泄しやすい |
| 次に | 食器・タオル・洗濯ネット | 洗濯ネットは移動と診察に便利 |
| 次に | ワクチン記録・猫の写真 | 写真は捜索と飼い主証明に使う |
フードと水は、古いものから使って減った分を買い足す「ローリングストック」にすると、賞味期限切れを防げます。ワクチン接種の記録は、コピーを取るかスマートフォンで撮影しておくと安心です。なお、犬の場合は狂犬病予防注射済票の提示を求める避難所がありますが、猫は狂犬病予防注射の対象ではありません。
外で暮らす猫たちの防災

飼い猫と違い、地域猫や野良猫を避難所へ連れて行くことはできません。できるのは、災害時に世話が途切れない体制をあらかじめ作っておくことです。
- 餌場やトイレの場所、猫の頭数を複数人で共有しておく
- 世話をしている人が被災したときに引き継げるよう、連絡の取り方を決めておく
- フードは一か所にまとめず、複数の家に数日分ずつ分散して置いておく
私が関わっている長崎の活動でも、世話を一人に集中させないことが、結局いちばんの備えになると感じます。飼い猫と外の猫では立場が違うので、まずは地域猫と野良猫の違いを押さえたうえで、複数人で見守る形にしておくと安心です。すでに世話をしている仲間がいるなら、地域猫グループの作り方もあわせてご覧ください。
タイプ別の製品例
2026年9月時点で手に入りやすいものから、タイプの違う例を挙げておきます。特定の製品をすすめるものではなく、本文の内容を当てはめるための例です。価格や在庫、詳しい仕様はリンク先で確認してください。
猫用避難防災セット(10点セット)
猫用にまとめられた避難セットの例です。中身を確認したうえで、フード・常備薬・排泄用品など自分の猫に必要なものを足す前提で使ってください。
折りたたみペットサークル(屋根付き)
避難先や車中泊で「猫の居場所」を作るための折りたたみ式サークルです。屋根付きなら飛び出しも防げます。使う前に自宅で一度組み立てて、猫を慣らしておくと安心です。
携帯給水ボトル
移動中や避難先での水やりに使うワンタッチ式の給水ボトルです。持ち出し袋に入れておけるサイズです。
よくある質問
Q. 避難所が猫を受け入れてくれない場合はどうすればいいですか?
受け入れ可能な避難所が別に指定されていることがあるので、まず自治体の案内を確認してください。そのうえで、親戚や知人の家、ペットホテル、動物病院など、猫を一時的に預けられる先を平常時に複数考えておいてください。
Q. 猫を家に残して避難してもいいですか?
環境省が同行避難を基本としているのは、いったん離れると再会が難しくなるうえ、あとから取りに戻ろうとして飼い主が危険な目に遭うためです。やむを得ず残す場合でも、水とフードを多めに置き、家具の転倒で逃げ場がなくならないよう安全な部屋を用意しておいてください。ただし、まずは連れて行ける準備を整えるのが基本です。
Q. 車の中で猫と過ごす形でも大丈夫ですか?
車中飼育を原則としている自治体もあり、選択肢の一つではあります。ただし夏場の車内は短時間で高温になり、猫にとって命に関わります。エンジンを切ると温度管理ができないため、日中の暑い時間帯をどう乗り切るかを必ず考えておいてください。
まとめ

この記事のまとめ
- ✓ 同行避難は「猫と一緒に避難場所まで逃げる行動」で、避難所で一緒に暮らせるという意味ではない
- ✓ 同伴避難を受け入れる避難所でも、飼育場所は人の居住スペースと分けられるのが一般的
- ✓ 受け入れの可否・置き場所・持参物は自治体ごとに違うので、公式案内で必ず事前確認する
- ✓ フードと水は少なくとも5日分、自治体によっては7日分以上が目安(2026年8月時点)
- ✓ キャリーとケージに慣らす・迷子札とマイクロチップ・健康管理の3つが平常時の柱
防災は、災害が起きてから考えることではありません。キャリーを部屋に出しておく、フードを一袋多く買っておく、自治体のページを一度開いてみる。今日できる小さな一歩から始めてみてくださいね!
※記事内の制度・数値は2026年8月時点の公的機関および自治体の公表情報にもとづく一般的な内容です。避難所でのペットの受け入れ可否や条件、備蓄の目安は自治体・避難所によって異なり、猫の状態や必要な備えにも個体差があります。最新の運用は必ずお住まいの自治体の公式案内でご確認ください。