猫がハアハアと口を開けて呼吸している。真夏の昼下がり、そんな姿を見て「これって大丈夫なの?」と不安になったことはありませんか?
猫は本来、口で呼吸をする動物ではありません。だからこそ、この呼吸の仕方そのものが、熱中症を疑う大きなサインになるんですよ。特に締め切った部屋の中や、日差しの当たる窓際は、体感以上に温度が上がっていることがあります。
私は大分県で不妊去勢手術を専門とする獣医師で、長崎でも保護猫・地域猫の活動に関わっています。外で暮らす猫たちの夏を、毎年ひやひやしながら見守っている立場です(さすがに、猫に日焼け止めを塗るわけにもいきませんし(汗))。
この記事では、猫の熱中症の初期サインから応急処置の手順、動物病院に連絡すべきタイミングまで、2026年9月時点の情報でまとめます。
猫の熱中症、こんなサインに気づいていますか?

猫の熱中症は、次のようなサインから始まります。
- ハアハアと浅く速い呼吸、舌を出しての口呼吸
- 食欲の低下、落ち着きのなさ
- 心拍数の増加
- よだれが増える
- 目や口の粘膜が赤くなる
- 耳や体が熱っぽい
なかでも口を開けての呼吸は、猫にとって普段はまずしない呼吸法です。これが見られたら、暑さのサインとして真っ先に疑ってくださいね。
普段のじっとした様子と比べて、呼吸や心拍のペースがいつもと違うと感じたら、それも見逃せないサインです。
猫は具合が悪くても、それをなかなか表に出しません。
・・・厄介なくらい辛抱強い生き物だと思いませんか。
熱中症になりやすいのはどんな猫?

誰にでも起こりうる熱中症ですが、なりやすい猫にはいくつかの傾向があります。
- 子猫(体温調節がまだ未熟)
- 短頭種(ペルシャ・エキゾチックショートヘアなど。鼻腔が短く熱がこもりやすい)
- 長毛種
- 肥満(皮下脂肪で熱がこもりやすい)
- 高齢猫(体温調節機能の衰え、水分摂取量の減少)
- 心疾患や呼吸器疾患などの基礎疾患がある猫
環境面では、気温が30℃を超える日はもちろんですが、30℃に届いていなくても湿度が高ければ油断できません。湿度が高いと、汗の代わりとなる呼吸での熱放散がうまくいかず、気温以上に体へ負担がかかるんですよ。
特に肥満は、猫自身が自覚しにくいまま進行しやすいリスクでもあります。
丸みを帯びた体つきは、いわば猫版の厚手のジャケットのようなものです。夏場だけは、この着ぶくれが恨めしい存在になりますね。
もしもの時の応急処置の手順

「熱中症かもしれない」と思ったら、まずは落ち着いて次の順番で対応してください。
- 風通しの良い涼しい場所へ移動させる
- 濡らしたタオルで全身を包む、または霧吹きで水をかける
- 氷枕を首まわりや脇の下に当てて冷やす
- 体温が39℃以下まで下がったら冷却をやめる
まずは涼しい場所に移すだけでも、体にかかる負担はぐっと軽くなります。
ここで大事なのが、使う水の温度です。冷たすぎる水は末梢血管を収縮させてしまい、かえって熱を体の外へ逃がしにくくなります。水に慣れていない猫の場合は、驚いてショック状態に陥る恐れもあるので、常温の水を使ってくださいね。
「もう氷水をバケツでかけたい」という気持ち、よくわかります。ですが、それはかえって逆効果なんですよ。
冷やしすぎにも注意が必要です。体温が39℃以下になったら、そこで冷却は終了。下げすぎもまた、体には負担になります。外で暮らす猫の暑さ対策については、日陰と給水場所の作り方の記事でも詳しくまとめていますので、あわせてご覧ください。
私が活動している大分や長崎でも、真夏の見回りや保護活動では、この応急処置の知識がいつも欠かせません。
動物病院に連絡するタイミング(受診の目安)

体を冷やしながら、できるだけ早く動物病院に連絡してください。事前に症状を伝えておくと、到着後の対応がスムーズになります。電話口で症状を伝えておくだけでも、到着後にすぐ処置へ移れることがあります。伝えるべき症状は次のとおりです。
- 食欲がない
- 吐いた
- 元気がない
- 触ると体が熱い
- 口を開けて呼吸している
- 痙攣している
- 眼振(目が小刻みに揺れる)がある
体温が40〜43℃まで上がっている場合は危険域です。意識がない場合は、様子を見ている場合ではありません!すぐに受診してください。
「涼しい部屋にいれば安心」とよく言われますが、当の猫は日向を選びがちです。
・・・自由を尊重したい気持ちと、命を守りたい気持ちが、夏場はいつもせめぎ合っています。
捕獲した猫の体調不良やケガに悩んだときは、TNR猫のケガの応急対応の記事もあわせて参考にしてください。
まとめ

暑さ対策は、特別な道具がなくても始められます。結局のところ、涼しい環境と水分、そして早めの気づきが何より効くんですよね。大分でも長崎でも、地域猫の見守りを続けるかぎり、暑さとの付き合いは切っても切れません。
この記事のまとめ
- ✓ 口を開けての呼吸、食欲低下、よだれ、耳や体の熱っぽさは熱中症の初期サイン
- ✓ 子猫・短頭種・長毛種・肥満・高齢猫・基礎疾患のある猫はリスクが高い
- ✓ 応急処置は常温の水で冷やし、体温39℃以下で冷却終了。冷やしすぎに注意
- ✓ 40〜43℃は危険域。意識がない場合はただちに動物病院を受診する
よくある質問
Q. 室内飼いの猫でも熱中症になりますか?
なります。エアコンをつけていない部屋や、日差しが差し込む窓際は室内でも高温になりやすく、室内飼いだからといって油断はできません。留守中の室温管理には注意してください。
Q. 何度から熱中症を疑えばよいですか?
明確な境界値はありませんが、気温30℃を超える環境や、気温がそれ未満でも湿度が高い環境では注意が必要です。数値だけでなく、口呼吸や食欲低下といった症状の有無をあわせて判断してください。体感温度も判断材料のひとつになりますので、数字だけに頼らず、猫の様子もあわせて見てあげてください。
Q. 応急処置をすれば病院に行かなくても大丈夫ですか?
いいえ、応急処置はあくまで受診までの体温上昇を抑えるための対応です。症状が見られた場合は、応急処置と並行して必ず動物病院に連絡し、受診の要否を相談してください。
涼しい部屋を用意しても、当の猫はたいてい日向で丸くなっています。
・・・熱中症だけは、その自由に付き合ってあげられません。
※記事内の症状・対応の目安は2026年9月時点の一般的な情報です。症状の程度には個体差があり、地域や気候によっても注意すべき水準は異なります。心配な様子が見られたら、自己判断せず、早めにお近くの動物病院にご相談ください。