「大分県で猫の不妊手術に助成は出るの?」「いくらもらえるの?」「どうすれば使えるの?」——地域猫やTNR活動に関わっていると、必ずぶつかる疑問だと思います。
私は臼杵市で不妊去勢手術を専門とする獣医師として開業し、長崎でも保護猫活動に関わっています。この記事では、大分県内の大分市・臼杵市・津久見市・佐伯市の猫の不妊手術助成制度を、2026年8月時点で各市の公式サイトに掲載されている内容にもとづいて整理しました。結論から言うと、4市とも助成制度は「ある」ものの、対象者・金額・手続きの流れはそれぞれ別物です。まずは全体の前提から見ていきましょう。
助成を使う前に知っておく3つの前提
市ごとの詳細に入る前に、共通して押さえておきたいポイントが3つあります。ここを飛ばして申請すると、後で「対象外でした」となりかねません。
1. 個人ではなく「登録団体」であることが前提
大分市・臼杵市・津久見市・佐伯市のいずれも、助成の対象は「市に登録した団体」です。大分市では「地域猫グループ」、臼杵市・津久見市・佐伯市では「地域活動団体」という呼び方をしていますが、いずれも個人が単独で申請できる制度ではありません。「近所の野良猫がかわいそうだから自分だけで手術費を助成してほしい」という形は想定されていない、という点は最初に理解しておく必要があります。
2. 「手術の前」に手続きするのが原則
大分市は手術前の大分市動物愛護センターへの事前連絡、臼杵市は手術前の申請書提出、佐伯市は交付決定通知を受け取ってからの手術実施が原則です。つまり、先に手術を済ませてから後出しで申請しても、対象外になる可能性があります。「まず手術、あとで書類」の順番は通用しないと考えておいてください。
3. 制度は市ごとに完全に別物
金額も、頭数の上限も、受付期間も、問い合わせ先も市ごとに異なります。猫がいる場所・活動している場所がどの市の管轄かによって、使える制度がまったく変わってきます。「大分県には助成がある」というひとくくりの理解ではなく、対象の市の制度を個別に確認することが基本です。
大分市:令和8年度 地域猫不妊去勢手術助成金
大分市では「令和8年度(2026年度)地域猫不妊去勢手術助成金」として、地域猫活動への助成制度を設けています。
対象者
大分市への「地域猫グループ」登録が完了している団体が対象です。その団体が管理している野良猫の手術に対して助成が出ます。
助成額・頭数
助成上限はオス1万円、メス2万円です。1グループにつき10頭まで申請できますが、予算執行状況によって年度途中に頭数の変更がある場合があります。
手続きの流れ
- 大分市動物愛護センターへ事前連絡
- 手術を実施
- 申請書・領収書・猫の一覧・写真を提出
- 交付可否決定の通知を受け取る
- 請求書を提出し、振り込みを受ける
受付期間
先着順の受付は令和8年4月1日〜令和9年1月29日予定、優先枠は令和9年2月1日〜令和9年3月15日となっています(2026年8月時点)。
制度の詳細と問い合わせ先は、大分市の公式案内ページでご確認ください。
臼杵市:所有者不明猫不妊去勢手術費助成金
私自身が拠点を置いている臼杵市の制度です。臼杵のような地方の町では、地域猫活動をしている人同士の距離が近く、制度の使い方が口コミで広がっていく実感があります。
対象者
臼杵市の「地域活動団体登録」が完了していることが条件です。対象は所有者不明猫(地域猫)で、飼い猫は対象になりません。
助成額
メスの不妊手術は10,000円、オスの去勢手術は5,000円です。頭数の上限や受付期間については、公式サイトに明記がありません。この点は市の担当課に直接確認する必要があります。
手続きの流れ
手術の「前」に、電子または書面で申請書を提出します。手術後は実績報告書と請求書を提出する流れです。順番を間違えると助成が受けられなくなるため、必ず申請を先に済ませてください。
申請様式と問い合わせ先は、臼杵市の公式案内ページでご確認ください。
津久見市:おおいたさくら猫プロジェクト活動団体登録
津久見市は、金額そのものよりも「団体登録」の手続きが中心に案内されている点が特徴です。
対象
所有者不明猫(飼い主のいない猫)が対象です。
手続きの流れ
まず、津久見市地域活動団体登録申請書(第1号様式)を環境保全課の窓口に提出します。市から団体登録決定通知書と登録証が交付されたら、手術を希望するタイミングで手術申請書を環境保全課窓口に提出する流れです。手術を希望する月の「前月10日まで」に連絡が必要という期限があるので、思い立ってすぐ手術、とはいかない点に注意してください。
助成の金額については、公式サイトに記載が見当たりませんでした。金額は環境保全課に直接確認することをおすすめします。
登録様式と問い合わせ先は、津久見市の公式案内ページでご確認ください。
佐伯市:令和8年度 飼い主のいない猫の不妊・去勢手術助成事業
佐伯市では「令和8年度(2026年度)飼い主のいない猫の不妊・去勢手術助成事業」として、地域活動団体向けの補助制度を実施しています。
対象者の要件
対象は地域活動団体で、次の要件が示されています。
- 飼い主のいない猫の減少を図り、市民の良好な生活環境の保持を目的としていること
- 飼い主のいない猫の適正な飼育及び動物愛護への理解の普及に寄与することを目的としていること
- 暴力団員が構成員でないこと
補助上限
メスの不妊手術は1頭につき13,000円、オスの去勢手術は1頭につき10,000円が上限です。頭数の上限は公式サイトに記載がありません。
手続きの流れ
- 補助金申請書類を提出
- 市から交付決定通知書を受け取る
- 手術を実施
- 実績報告書を提出
- 交付額確定通知書を受け取る
- 交付請求書を提出し、補助金を受け取る
期限
申請期限は令和9年1月22日、手術実施期限は令和9年2月14日です(2026年8月時点)。申請書類と問い合わせ先は、佐伯市の公式案内ページでご確認ください。
4市の助成制度 比較表
4市の制度を一覧にまとめました。「記載なし※」の項目は、2026年8月時点で各市の公式サイトに記載がなかったものです。表は横にスクロールできます。
| 市 | 対象 | オス | メス | 頭数上限 | 手続きの要点 | 公式 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 大分市 | 地域猫グループ登録団体 | 上限1万円 | 上限2万円 | 10頭まで | 手術前に愛護センターへ事前連絡 | 公式ページ |
| 臼杵市 | 地域活動団体 | 5,000円 | 10,000円 | 記載なし※ | 手術前に申請書を提出 | 公式ページ |
| 津久見市 | 地域活動団体 | 記載なし※ | 記載なし※ | 記載なし※ | 前月10日までに手術申請 | 公式ページ |
| 佐伯市 | 地域活動団体(要件あり) | 10,000円 | 13,000円 | 記載なし※ | 交付決定通知を受けてから手術 | 公式ページ |
※=2026年8月時点で市公式サイトに記載なし。申請前に各市の公式ページから担当課へ確認してください。
申請でつまずきやすいところ
実際に助成制度を使おうとして相談を受けることが多いのが、次のようなつまずきです。
団体登録をしないまま手術を進めてしまう
「とにかく猫が増えて困っているから、先に手術してしまおう」という気持ちはとてもよくわかります。ただ、団体登録が済んでいない状態で手術をしてしまうと、後から助成を申請しても対象にならないことがあります。急いでいるときほど、まず登録の要否を市に確認してください。
手術の順番を間違える
大分市の事前連絡、臼杵市の手術前申請、佐伯市の交付決定通知など、いずれも「手術より先にやること」が決まっています。長崎で保護猫活動をしていても同じ悩みをよく聞きますが、地域の助成制度は書類の順番を守らないと成立しないものが多いというのが実感です。
市ごとの制度を混同してしまう
「隣の市はこうだったから」という情報をそのまま自分の市に当てはめてしまうケースも見られます。金額も頭数上限も手続きも市ごとに異なるので、必ず活動している場所の市の情報を個別に確認してください。
頭数上限や金額が不明な項目は必ず担当課に確認する
この記事では、津久見市の助成金額、臼杵市・佐伯市の頭数上限など、公式サイトに記載が見当たらなかった項目は「記載なし」としています。これは制度がないという意味ではなく、単に公開情報からは読み取れなかったということです。実際に申請を検討する段階では、各市の公式案内ページから担当課へ必ず確認してください。
この記事のまとめ
- ✓ 大分市・臼杵市・津久見市・佐伯市には、それぞれ独自の猫の不妊去勢手術助成制度がある
- ✓ 4市とも対象は個人ではなく「市に登録した団体」。個人単独での申請はできない
- ✓ 手術前に事前連絡・申請・交付決定が必要な市が多く、手術後の後出し申請は対象外になりうる
- ✓ 金額・頭数上限・受付期間は市ごとに異なる。申請前に必ず活動している市の担当課へ直接確認を
大分県内であっても、猫の不妊手術助成は市町村ごとに別々の制度として運用されています。まずは自分が活動している市の担当課に連絡し、団体登録の要否と最新の条件を確認するところから始めてみてください。なお、TNR活動そのものの流れや進め方については、TNR活動の基本で詳しく解説しています。
※本記事は2026年8月時点で各市公式サイトに掲載されている情報にもとづいています。制度・金額・期限は年度によって変わるため、申請前には必ず各市の担当課で最新の内容をご確認ください。また、猫の状態には個体差があり、手術の可否や方法はかかりつけの動物病院にご相談ください。