「子猫を拾ってしまったけど、何からすればいいかわからない」——まず落ち着いてください。拾った直後にすべきことは、大きく分けて「保温」「母猫の確認」「動物病院への相談」の3つだけです。この記事では、長崎で保護猫活動もしている獣医師の立場から、拾ってから最初の24時間にすべきことを順番に解説します。

拾う前に:本当に保護が必要な子猫か確認する
子猫を見つけても、すぐに抱き上げないでください。近くに母猫がいないか、まず周囲を確認します。生後2ヶ月に満たない子猫は母猫の育児がなければ自力で生きていけませんが、母猫が餌を探しに一時的に離れているだけのケースも珍しくありません。物陰から30分〜1時間ほど様子を見て、母猫が戻ってくるようなら、そのまま見守るのが正解です。親子を引き離してしまうと、子猫にとっても母猫にとっても負担になります。
一方で、次のような場合は保護を検討してください。
- 目が開いておらず、鳴き続けて弱っている
- 体が冷えきっている、ぐったりしている
- 交通量の多い道路脇など、明らかに危険な場所にいる
- 長時間見守っても母猫が戻ってこない
拾ってから最初の24時間にすべきこと
体を温める(保温は最優先)
子猫は自分で体温を調整する力が弱く、体が冷えていると命に関わります。子猫の平熱はおおよそ38度前後で、体温が下がっている状態は非常に危険なサインです。タオルで包んだ湯たんぽ(お湯を入れたペットボトルでも代用できます)を用意し、人肌くらいのぬくもりを感じる程度に調整して、子猫の体に添わせてあげてください。ダンボール箱にタオルを敷いて、湯たんぽと子猫を一緒に入れると保温しやすくなります。低温やけどを防ぐため、湯たんぽに直接触れないようタオルを一枚挟むことも忘れないでください。

水分・栄養は「つなぎ」でしのぐ
理想は子猫用ミルク(人肌程度のお湯で溶かしたもの)ですが、手元にない場合は、動物病院に連れて行くまでの一時しのぎとして、人肌程度のお湯に少量の砂糖を溶かした砂糖水を与える方法が一般的に紹介されています。人間用の牛乳は子猫のお腹に合わないことが多いため、避けたほうが無難です。無理に飲ませようとして誤嚥させないよう、スポイトや小さめのスプーンで少しずつ、様子を見ながら与えてください。目が開いていない・自力で首を持ち上げられないような幼い子猫は、素人判断でのお世話がいちばん難しい時期です。できる限り早く専門家に相談する前提で、あくまで応急の対応と考えてください。
動物病院にはいつ・何のために連れて行くか
保護したその日のうちに連れて行けるのが理想です。難しい場合も、次に病院が開くタイミングで必ず受診してください。外で過ごしていた子猫は、寄生虫や猫カゼ(猫ヘルペスウイルス感染症など)を持っていることが少なくなく、体重や月齢によっては栄養状態の確認も必要になります。病院では、体重測定・寄生虫の駆除・感染症の有無の確認などをひと通り行うのが一般的です。私自身の現場でも、保護直後の子猫はまず「今どういう状態か」を把握することを優先しています。
すでに先住猫を飼っているご家庭では、特に注意が必要です。拾った子猫が感染症を持っている可能性がゼロではないため、病院で感染症の心配がないと確認できるまでは、先住猫と直接触れ合わせず、別の部屋で過ごしてもらってください。ケージやタオル、食器も分けておくと安心です。
このあとの選択肢:自分で育てる・預ける・里親を探す
「保護したら最後まで自分で育てないといけない」と思い込む必要はありません。生まれて間もない子猫のお世話は、数時間おきの授乳が必要になるなど、想像以上に手がかかります。無理をして共倒れにならないよう、次のような選択肢も知っておいてください。
- 自分で育てる……子猫用ミルクでの育児から始め、離乳が進んだら子猫用フードへ切り替えます
- ミルクボランティア制度を利用する……自治体によっては、生後間もない子猫を離乳まで一時的に預かる「ミルクボランティア」制度があります。自分で育てるのが難しい場合、動物愛護センター等の窓口に相談してみる価値があります
- 保護団体・里親探しに相談する……地域の保護猫団体が、育児から譲渡先探しまでサポートしてくれる場合もあります
私が活動している大分や長崎のような地方の町でも、動物愛護に関する相談窓口は各自治体に設けられています。多くの窓口では、突然の持ち込みではなく事前の電話相談を前提としているので、まずはお住まいの都道府県・市区町村の公式サイトで「猫 保護 相談」といった言葉で調べ、案内に沿って連絡してみてください。臼杵市のような地方の町でも、保護してすぐに一人で抱え込まず、まず相談先を探すことが結果的に子猫のためになります。
子猫が育って不妊去勢手術を受けさせる年齢になったときのために、TNRの基本と流れも知っておくと、今後の判断がしやすくなります。母猫が近くにいて今回は見守ることにした場合も、将来的にその子猫たちにTNRを検討する場面が出てくるかもしれません。まずは地域猫と野良猫の違いを知っておくと、地域での関わり方の選択肢が広がります。
まとめ
この記事のまとめ
- ✓ まず母猫の有無を確認し、いなければ保温を最優先する
- ✓ ミルクや砂糖水は病院に着くまでの応急対応と考える
- ✓ 保護したその日か、次に病院が開くタイミングで必ず受診する
- ✓ 先住猫がいる家庭は感染症確認まで隔離する
- ✓ 自分で抱え込まず、ミルクボランティアや保護団体への相談も選択肢に入れる
子猫を拾うという出来事は、多くの人にとって突然やってきます。すべてを完璧にこなす必要はありません。「保温」と「早めの受診」さえ押さえられれば、最初の対応としては十分です。受診の費用と準備も事前に確認しておくと、いざというときに慌てずに済みます。
※記事内の対応方法・制度は2026年8月時点の一般的な目安です。子猫の状態や地域の制度は個体差・地域差があります。体調に不安がある場合は自己判断せず、お早めに動物病院を受診してください。ミルクボランティア等の制度についてはお住まいの自治体の公式案内でご確認ください。