猫の健康

猫パルボ(猫汎白血球減少症)とは?子猫に危険な感染症を獣医が解説

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「保護した子猫が急に食べなくなり、嘔吐と下痢が止まらない」。このとき必ず頭に入れておきたい病気のひとつが猫パルボ(猫汎白血球減少症)なんですよ。猫パルボウイルスによる感染症で、子猫では死亡率が高く・・・ウイルスが環境中で長く生き残り、アルコールなどの一般的な消毒では効きにくいという厄介な性質があります。一方で、ワクチンで予防できる病気でもあるんですよ。

不妊去勢手術を専門とする獣医師で、保護猫・地域猫の活動に関わっています。この記事では、猫パルボの基本と、保護活動の現場で押さえておきたい隔離・消毒の一般的な考え方を整理しますが、実際の診断や治療はその猫を診た獣医師が判断するものです。ここに書くのはあくまで一般的な解説として、参考にしてくださいね。

猫パルボ(猫汎白血球減少症)とは

猫パルボ(猫汎白血球減少症)とはのイメージ

猫パルボウイルスが引き起こす感染症で、正式には猫汎白血球減少症と呼ばれます。猫伝染性腸炎、猫ジステンパーという呼び名も、いずれも同じ病気を指しているんですよ。

このウイルスは、体の中でもさかんに細胞分裂している場所を狙って壊すんですよ。代表が腸の粘膜と、血液を作る骨髄です。腸がやられれば激しい嘔吐と下痢が起こり、骨髄がやられれば白血球が減ります。「汎白血球減少症」という名前は、この白血球の減り方から来ています。

白血球は細菌と戦う細胞です。それが減った状態で、腸の粘膜まで傷んでいる。つまり細菌が体内に入りやすい入口ができているのに、防ぐ兵隊がいないという状況になるわけです。子猫が短時間で急激に悪くなるのは、この二重の攻撃が理由なんですよ。潜伏期間はおおむね2〜14日とされています。

どうやってうつるのか

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主な感染源は感染した猫の糞便です。ただし、猫同士が直接触れ合わなくても感染は広がります。食器、猫トイレ、ケージ、タオルや敷物、被毛に付いたウイルスが媒介になります。

見落としやすいのが世話をする人間そのものが運び手になる点です。手や衣類、靴の裏にウイルスが付いたまま別の部屋へ移れば、そこで感染が起きます。「隔離していたのに広がった」というときは、たいてい人か道具が動線をつないでいます。

また、症状が出る約3日前からウイルスの排出が始まるという指摘もあります。元気に見える段階でもすでにうつしている可能性があるということです。出自のわからない猫を迎えるときに隔離が必要なのは、このためです。

どんな症状が出るのか

どんな症状が出るのかのイメージ

初期の症状は、正直なところ「他の病気と見分けがつかない」ものなんですよね。

  • 発熱
  • 元気がない、うずくまってじっとしている
  • 食欲不振、水も飲まなくなる

ここから嘔吐、下痢(血が混じることもあります)、脱水、体重の減少へ進みます。脱水が強くなって体温まで下がるのは、あまり良くない兆候です。

大事なのは、初期症状が「なんとなく元気がない」でしかないことです。特に子猫では、朝は少し食欲がない程度だったのに夕方にはぐったりしている、という進み方をすることがあります。子猫の急な食欲不振・嘔吐・下痢は、様子を見る対象ではありません。できるだけ早く動物病院を受診してください。拾ったばかりの子猫の扱いは子猫を拾ったときの手順にまとめています。

なぜ子猫にとって危険なのか

なぜ子猫にとって危険なのかのイメージ

ワクチンを受けておらず免疫を持たない猫では感染率がほぼ100%、なかでも幼弱な猫の死亡率は75〜90%というデータが紹介されているんですよ(2026年8月時点の一般的な資料より)。数字には幅がありますが、子猫にとって重い病気であることは共通しています。

もうひとつの理由が移行抗体の切れ目です。子猫は母猫の初乳から一時的な免疫(移行抗体)をもらいますが、これは早ければ生後6〜8週齢、遅くても16週齢ごろまでになくなります。この免疫が薄れてからワクチンが効き始めるまでの間に、無防備な期間ができてしまうわけです。

保護されたばかりの子猫は、栄養状態やストレスの面でも不利なんですよね。授乳期の子猫を預かるときの基本はミルクボランティアの記事も参考にしてください。

治療は「猫自身を支える治療」が中心

治療は猫自身を支える治療が中心のイメージ

猫パルボウイルスそのものを直接やっつける薬があるわけではないです。治療の中心は、猫が自分の力でウイルスに打ち勝つまでの間、体を支えることです。一般的には次のような処置が行われます。

  • 点滴(輸液)による脱水・電解質・低血糖の補正
  • 二次的な細菌感染を抑えるための抗菌薬
  • 嘔吐や下痢に対する処置、栄養の補給
  • 血液検査による白血球数などの確認

どこまで回復できるかは、猫の月齢・体力・発見の早さで大きく変わります。「この治療をすれば必ず助かる」と言える病気ではないです。だからこそ、おかしいと思った時点で連れて行くことが効きます。入院管理が必要になることも多く、費用や方針は病院で確認してください。野良猫を病院へ連れて行くときの段取りは野良猫の通院費用と準備で解説しています。

予防の柱はワクチン

予防の柱はワクチンのイメージ

猫パルボ(猫汎白血球減少症)は、猫ヘルペスウイルス・猫カリシウイルスと並んでコアワクチンに位置づけられています。コアワクチンとは「すべての猫が接種を検討すべきもの」という分類で、いわゆる3種混合ワクチンにこの3つが含まれています。

子猫の接種は、移行抗体が切れるタイミングに合わせて複数回に分けて行うのが一般的です。生後6〜8週齢ごろに開始し、16週齢かそれ以降まで2〜4週間隔で繰り返し、さらに生後6〜12か月齢で追加する組み方が標準的とされています(2026年8月時点)。1回打てば終わり、というわけではない点は押さえておいてくださいね。

実際の種類・回数・時期は、猫の年齢や体調、屋外に出るかどうかで変わります。体調が悪い猫や衰弱している子猫では接種の前に別の対応が要ることもあるので、かかりつけの動物病院で相談してくださいね。

保護活動の現場での隔離と消毒

保護活動の現場での隔離と消毒のイメージ

新しく迎えた猫は2週間隔離する

出自のわからない猫を迎えるときは、2週間ほど生活空間を完全に分けるのが基本です。猫パルボの潜伏期間(およそ2〜14日)を想定した期間で、他の多くの感染症の潜伏期間もおおむねこの範囲に収まるわけです。

別室が用意できない場合でも、ケージで接触を避け、食器・猫トイレ・タオルは共有しないようにします。隔離中は下痢・嘔吐・鼻水・食欲の変化を毎日確認して、この期間に一度動物病院で健康診断を受けておくと安心ですよ。

消毒は塩素系を使う

猫パルボウイルスは環境中での抵抗性が非常に強く、条件によっては数か月から年単位で感染力を保つとされています。そして石けんやアルコールでは十分に失活しないです。有効とされているのは塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)の消毒薬です。

具体的な方法として、市販の次亜塩素酸ナトリウム(濃度5%程度のもの)を25倍ほどに薄め、その液に室温で10分以上浸ける、という手順が紹介されています(2026年8月時点)。実際に使うときは、次の点に注意してくださいね。

場面気をつけること
使う前製品表示の希釈方法を確認する。他の洗剤と混ぜない
使うとき換気する。手袋を使う。猫を別室へ移してから作業する
使った後猫が触れる場所は水拭きしてよく乾かす。金属は腐食しやすい
布・木・段ボール染み込むと消毒しきれない。処分も検討する

人と道具の動線を切る

隔離をしても、世話をする人が行き来すれば意味が薄れます。健康な猫の世話を先に済ませ、隔離中の猫は最後にという順番を守ってください。部屋ごとに専用のスリッパやエプロンを決める、使い捨て手袋を使う、猫と猫の間で必ず手を洗う。地味ですが、これが一番効きます。

すでに発症した猫が出た場合は、消毒だけで自己判断せず、動物病院に相談してくださいね。同居していた他の猫の対応も含めて、その環境に合わせた指示が必要になります。

よくある質問

Q. 人にうつりますか?

猫パルボウイルスが人に感染するとは考えられていません。ただし、人はウイルスの運び手にはなります。感染した猫を世話したあとは、手洗いと着替えを徹底してください。

Q. 犬のパルボと同じ病気ですか?

犬にもパルボウイルスによる病気がありますが、猫汎白血球減少症とは別の病気として扱われます。犬猫が同居する環境での注意点は、かかりつけの動物病院で確認してください。

Q. 一度かかった猫は、また感染しますか?

回復した猫には強い免疫ができ、その後この病気にはかからなくなるとされています。ただし他の感染症は別です。回復後の健康管理は病院と相談しながら進めてください。

Q. 外にいる猫(TNRの対象)にはどう備えればいいですか?

屋外の環境そのものを消毒することは現実的ではありません。現場でできるのは、捕獲器・キャリー・タオルなど人が持ち回る道具の消毒を徹底することと、手術のときにワクチンを一緒に相談することです。私が関わっている大分や長崎の現場でも、道具の管理は一番の基本として扱っています。手術の流れはTNRの流れと費用の目安にまとめています。

まとめ

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この記事のまとめ

  • 猫パルボ=猫汎白血球減少症。腸と骨髄を壊し、子猫では死亡率が高い
  • 初期症状は「発熱・元気がない・食べない」だけ。急な食欲不振と嘔吐下痢は早めに受診を
  • 治療は輸液と抗菌薬などで体を支えるのが中心。発見の早さがものを言う
  • 予防の柱はコアワクチン。子猫は移行抗体の切れ目に合わせて複数回接種するのが一般的
  • 新入り猫は2週間隔離。消毒はアルコールではなく塩素系。人と道具の動線を切る

子猫の命に関わる病気ですが、やることははっきりしています。ワクチンの予定を守る、新しい猫は隔離する、道具は塩素系で消毒する。そして、いつもと違うと感じたら早めに病院へ連れて行くことです。

※記事の内容は2026年8月時点の一般的な情報です。症状の現れ方や経過には個体差があり、ワクチンの種類・回数・時期や消毒の方法は猫の状態や環境によって異なります。診断・治療・接種の判断は必ず動物病院にご相談ください。

執筆者:calico3(獣医師歴約40年)
大分・長崎で飼い主のいない猫の不妊手術(TNR)に取り組む獣医師が、現場で経験したことを書いています。
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