「ヘモバルトネラ症」という病名を調べてこの記事にたどり着いた方へ、まず結論から言ってしまいますが、ヘモバルトネラ症は現在、猫ヘモプラズマ感染症と呼ばれている病気なんですよ。名前は変わりましたが中身は同じで、赤血球に細菌がとりついて貧血を起こす感染症を指します。
不妊去勢手術を専門とする獣医師で、保護猫・地域猫の活動にも関わっています。外で暮らす猫や外に出る飼い猫と縁の深い病気なんですよ。この記事では「名前が変わった経緯」「どんな症状が出るのか」「感染経路と予防」を、一般的な情報として整理していきます(2026年8月時点の情報です)。
ヘモバルトネラ症は「猫ヘモプラズマ感染症」の旧称

かつてこの病気の原因は、ヘモバルトネラ(Haemobartonella felis)というリケッチアの仲間の病原体と考えられていて、病名も「ヘモバルトネラ症」や「猫伝染性貧血」と呼ばれていたんですよ。
その後、遺伝子解析(16S rRNA遺伝子の解析)が進んだ結果、この病原体は実はマイコプラズマの仲間であることがわかり、分類が変更されました。これに伴って病名も「猫ヘモプラズマ感染症」へと改められています。古い飼育書や昔の情報では旧称のまま載っていることがあるので・・・「ヘモバルトネラ症と猫ヘモプラズマ感染症は同じ病気」と覚えておけば混乱しませんよ。
| 呼び方 | 説明 |
|---|---|
| ヘモバルトネラ症(旧称) | 病原体をヘモバルトネラ属と考えていた時代の病名。「猫伝染性貧血」とも呼ばれた |
| 猫ヘモプラズマ感染症(現在) | 遺伝子解析でマイコプラズマの仲間と判明し、再分類された現在の病名 |
原因となる病原体の種類
猫のヘモプラズマにはいくつかの種類が知られていて、代表的なものがマイコプラズマ・ヘモフェリス(Mycoplasma haemofelis)です。種類によって病原性に差があり、マイコプラズマ・ヘモフェリスは比較的重い貧血を起こしやすいと報告されています。一方で、感染していてもほとんど症状を示さない種類・ケースもあり、「感染=必ず重症」というわけではないんですよ。
どんな病気?赤血球に寄生して貧血を起こす

ヘモプラズマは、血液の中で酸素を運ぶ赤血球の表面にとりつく細菌です。とりつかれた赤血球は体の免疫に「異常な赤血球」とみなされて壊されやすくなり、赤血球がどんどん減っていきます。これが溶血性貧血(赤血球が壊されて起こる貧血)と呼ばれる状態なんですよ。
貧血が進むと、体中に酸素を届ける力が落ちるため、元気がなくなり、少し動いただけで疲れるようになります。重症の場合は命に関わることもある病気なので、後述のサインに気づいたら早めの受診が大切ですよ。
気づいてあげたい貧血のサイン

貧血は外から見えにくい症状なんですが、次のような変化がヒントになりますよ。
- 歯茎や舌の色が白っぽい(健康な猫の歯茎はきれいなピンク色をしています)
- 元気がない、寝てばかりいる、少し動いただけで疲れる
- 食欲が落ちている
- 呼吸が浅く速い
- 発熱している、体を触ると熱っぽい
- 白目や耳の内側、歯茎が黄色っぽい(黄疸のサイン)
とくにわかりやすいのが歯茎の色です。日頃からスキンシップのついでに口元をめくって色を見ておくと、「いつもより白い」という変化に気づきやすくなりますよ。ただし、貧血を起こす病気はヘモプラズマ以外にも腎臓病・ほかの感染症・免疫の病気など多岐にわたります。ここに挙げたサインだけで原因を見分けることはできないので、当てはまる様子があれば自己判断せず動物病院を受診してくださいね。
感染経路と、感染しやすい猫

主な感染経路
感染経路は完全には解明されていないんですが、一般的には次のルートが考えられています。
- ノミ・マダニなどの吸血する外部寄生虫を介した感染。血を吸われるだけでもリスクになります。
- 猫同士のケンカによる咬み傷からの感染
- 母猫から子猫への感染
血液を介してうつる病気なので、「血を吸う虫」と「流血を伴うケンカ」が関わると考えられているわけです。ケンカの咬み傷は、猫免疫不全ウイルス(FIV)などほかの感染症とも共通する感染ルートで、実際にFIVに感染している猫はヘモプラズマ感染のリスクも高いことが報告されています。
外で暮らす猫・外に出る猫に多い
この感染経路からわかるとおり、リスクが高いのはノミやケンカと接点の多い猫です。具体的には、野良猫や外で暮らす保護前の猫、外に出る習慣のある飼い猫、そしてケンカをしやすい未去勢のオス猫は、報告されている危険因子に重なります。完全室内飼いで同居猫もいない場合、感染の機会はかなり限られますよ。
保護猫活動の現場では、保護したばかりの猫が貧血を起こしていて、検査でこの感染症が見つかるケースが知られています。野良猫を保護して動物病院に連れて行く予定がある方は、野良猫を病院へ連れて行く準備と捕獲器の使い方もあわせて参考にしてください。
検査と治療の一般的な流れ

ここでは「動物病院でどんなことをするのか」の一般論を紹介します。実際の検査項目や治療内容は、猫の状態を診察した獣医師が個別に判断するものなので、あくまで全体像の理解としてお読みくださいね。
検査の一般論
まず血液検査で貧血の有無や程度を確認します。ヘモプラズマそのものを調べる方法としては、血液を薄く伸ばして染色し顕微鏡で観察する血液塗抹検査(赤血球の表面に小さな点状の菌体が見えることがあります)と、病原体の遺伝子を検出するPCR検査が知られています。菌体は非常に小さく、顕微鏡だけでは判断が難しい場合もあるため、確定にはPCR検査が用いられるのが一般的です。
治療の一般論
治療には、ヘモプラズマに効果があるとされる抗菌薬(抗生物質)が用いられるのが一般的で、貧血が重い場合には輸血などの支持療法が検討されることもあります。適切な治療で症状が落ち着くことは多いとされていますが、体内から病原体が完全にいなくならず、症状のないまま保菌する「キャリア」の状態になることも知られています。キャリアの猫は、体調を崩して免疫が落ちたときに再発する可能性があるため、治療後も経過観察が大切とされています。薬の種類・量・期間は、必ず診察した獣医師の指示に従ってくださいね。
予防のためにできること

ワクチンはないため、予防の基本は感染経路を断つことになりますよ。
- ノミ・マダニの定期的な予防……予防薬にはさまざまな種類があるので、猫の生活環境に合ったものをかかりつけの動物病院で相談してくださいね
- 室内飼育……外に出なければ、ノミとの接触もケンカの機会も大きく減らせますよ
- ケンカを減らす……未去勢のオスはケンカが多くなりがちです。去勢によってケンカやマーキングが減ることは、不妊去勢のメリット・デメリットで詳しく解説しています
- 迎えた猫は早めに健康チェック……野良猫・保護猫を家に迎えるときは、先住猫と接触させる前に動物病院で健康状態を確認してもらうと安心ですよ
まとめ

この記事のまとめ
- ✓ ヘモバルトネラ症は旧称。現在は「猫ヘモプラズマ感染症」と呼ばれる、赤血球に細菌が寄生して貧血を起こす感染症
- ✓ サインは歯茎や舌の白さ・元気や食欲の低下・速い呼吸・黄疸など。歯茎の色は日頃からチェックを
- ✓ ノミなどの吸血虫やケンカの咬み傷が主な感染ルートと考えられ、外に出る猫・野良猫にリスクが高い
- ✓ 予防の基本はノミ・マダニ対策と室内飼育、ケンカを減らすこと
- ✓ 貧血のサインに気づいたら自己判断せず、早めに動物病院へ
猫ヘモプラズマ感染症は、名前こそ聞き慣れないものの、外の猫と関わる人にとっては決して珍しくない病気です。重い貧血に進む前に気づいてあげられるかどうかが、大きな分かれ目になります。「歯茎が白い気がする」「最近寝てばかりいる」。そんな小さな違和感があったら、様子見で済ませず、かかりつけの動物病院に相談してくださいね。
※本記事は2026年8月時点の一般的な情報をまとめたもので、特定の診断・治療を保証するものではありません。症状や治療法は猫の状態によって異なります。気になる症状がある場合は、必ず動物病院を受診し、獣医師の診察を受けてください。